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「はーっ、こりゃ凄い事になったねぇ」
大規模メンテナンス後、20分以内に接続した俺は目を丸くして呑気に呟いた。
大規模メンテナンス後だというのに改良された場所を確認しようとも思わないプレイヤーが、大都市『ブルーバード』に溜まっている。
怒るプレイヤーもいれば、悲しむプレイヤーも。
「どういう事だよ…誰か!どうなってるか説明しろよ!」
怒鳴るプレイヤーも。
「それはこっちの台詞だ!クソガキ!」
それに怒鳴る年上も。
はぁ。
(こりゃ、駄目だな。回復の見込みなしっと…、しばらくはこのままだろうな)
頭を掻いて思う俺の右手首には、赤い装飾の付いた白黒の腕輪が光っている。
それを見つけたプレイヤーはこちらをじっと見つめる。
(おっと、まずい)
そそくさと路地裏に逃げて一呼吸する、先程のプレイヤーも走ってやってくる程の気力はないらしい。
小走りに路地裏を抜けて、建物の階段を駆け上がり手摺りに足を掛けて跳ぶ。
(おおっ)
高い跳躍力を制御出来なかった俺は少し離れているだけの階段の手摺りにぶつかった、金属音が流れた後に地味な痛みに駆られる。
(や、お、落ちる!)
手摺りにも手が付けられず3階の階段から落下する、心臓がドクドクと激しく鳴っていた。
ザッ
運良く脚から落ちることが出来た、三階から降りた程度でこの強靭な脚は屈しない。
(強靭すぎ…)
「……とわ、か?」
声がした、階段の二階辺りから銀髪の男が顔を出してこちらを見ている、何て恥ずかしい。
「クロスロードだね」
「驚いた、階段を登ってたら人が落ちてきたからな。飛び降り自殺かと思った」
「違う違う…」
クロスロードは階段を降りてきて、階段の段差に座った。俺はその隣で建物に背を置く。
「改めて初めまして、なのかな。親友」
「おいおい」
そんな会話の中に1つの罵声が響く、恐らくは『ブルーバード』の広場からだろう。
まだ、続いていたようだ。
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