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「は?三月ウサギはあのウサギじゃねぇの?」
『あのウサギは時計を持って急いでたウサギ。って言えば分かるかしら』
「…そーいやぁ時計持ってた気もしなくもない。」
ウサギはなにか金色の円盤を持っていた。それかもしれない、とその存在を思い出す。
「あれ?でもそのウサギってトランプの女王の仲間なんじゃ」
『その話はウサギの許可が無いと話すべきではないわ。それに、今は三月の事が聞きたいんじゃないの?』
「あ、悪り。で、三月ウサギってのはどんななんだ?」
『チャラ男でたらし。気に入った女の子はそくお持ち帰りよ。あと大の紅茶好き。毎日“俺の生まれない日”を祝って下さいって帽子屋のとこに押しかけてきてたわ。』
「生まれない日?」
『そ。誕生日以外の日全部のことよ。三月曰く
“誕生日は年に1回しか無いけど、生まれない日なら年に364回もあるからお得だろ?”
らしいわ。』
「アリスお前そんな嫌なかおしなくても。」
『だって私あいつ嫌いなのよ。笑顔が気持ち悪いわ。』
「そんなブサイクなのか?」
『いいえ、どちらかというと恰好良い部類に入るわ。』
「じゃあなんで」
『あいつは心から笑わない。いつも作り物の笑顔しかしないのよ。』
「へぇ…」
『なによその薄い反応…』
「いや会ってみないことにはさ、俺自身がどう思うか分かんねぇから…。ま、参考にはさせてもらうわ。」
アリスは一瞬目を丸くしたかと思うと、少し笑った。
『…それもそうね。ベラベラ喋ってごめんなさい。』
「や、別に謝る事でもないし。ってあぁ!昼休み終わる!じゃっ、アリスまたな!」
そう言って走り去る大輔を、アリスは見つめていた。
その目は、
『良い子に育って…。』
母親の目だった。
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