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首一つ軽く跳ねられそうな状況なのに、焦らないのは、自分が大して命に執着していないからだろう。
幼なじみ関連で、事ある毎に裏に呼び出されては、女性陣から非難され、罵詈雑言を受け、時には無茶な要求を受けてきた。
子細は省くとして、今さら命の一つや二つどうってことない。修羅場というのを潜ってきた所為もある。
肉体的な死、社会的な死、精神的な死、様々な死を覚悟しているし、「人は死ぬもの」と自分の中で括っているからだ。
だから、殺意を抱いても殺す気はない相手に最も有効な手段として……、
首に突き付けられている剣を手で掴み、手の平が切れるのを構わずに首に近付けていく。
おそらく、自分は醜悪な笑みを浮かべて目の前の騎士を見据えている。
軽率なヤツ……、「やめろ」と言うなら最初からやらなければいい。
奇抜な行動に周りの騎士も固まってしまって……。
「早く止めないと死んじゃうぞ?」
この言葉を発すると場の温度が一気に下がる。
いつの間にか立って、後ろに回り込んでいた幼なじみに、刃を掴んでいる手の首を圧迫され、手を剣から離させられる。
手の平から血が零れて、白い石畳を汚す。幼なじみは圧迫していない方の手からハンカチを取出し巻いていく。実に手際がいい。
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