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何かがキレて目を醒ましてしまったせいで、全身の毛穴が開き、産毛まで逆立っているような感覚に襲われる。
剣を向けていた騎士をはじめ、他の騎士たちも異様なモノを感じとったのか、腰に据えている剣の柄に手を掛け警戒する。
「皆、静まれ!!」
壮年の男の声が空間に響き渡る。鶴の一声がかかり、騎士は剣の柄から手を離し、中央を開けて左右にはける。
奥には、豪華絢爛な服装を着た男と女、自分たちと同じくらいの少女がいて、彼らにはやや劣るが派手な衣裳に身を包んだ大人たちが数人いる。
「勇者殿、気を沈めて戴けませぬか?」
まんま中世の王様然の男が申し訳なさそうに言ってくる。
勇者……勇者……、勇者? この王様は勇者と言ったのか? ……ワケが分からない。頭がおかしいと本気で思う。拍子抜けしてどうでも良くなってきた。
「勇者? それって、俺たちに言ってますか?」
幼なじみは、当然の疑問にそう聞き返さずにはいられなかったようだ。
自分は、思考を放棄しかけているので勝手に話を進めてくれると嬉しいと思い、耳と目だけは最低限働かせて、王様と幼なじみのやり取りを納めておく。
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