お役御免の脇役

3/9
前へ
/54ページ
次へ
快適な軟禁生活というのは、あながち間違えではない。 白塗りの壁に客室で、窓もあって光は入ってくるし、風も通り抜けてくれる。 客室の窓からは手入れされた中庭が見えるし、書物や本も届けられる。 頼めば、付き添いが同伴して、限られた範囲だが、出歩くことも許されている。 過去の伝承から、勇者の召喚から使命遂行までの期間は数ヶ月ほど、と思っていたよりは短い。 魔王の根城はすでに割れており、問題は【聖剣】の在処だ。 王国が魔物を抑えていることから、【聖剣】の捜索に専念でき、期間は更に短縮されるだろう。 二週間ほど延期した分、拘束期間は長くなってしまったが、幼なじみのユウキが生きて帰ってくるなら、それはそれで耐えようもある。 食事は、王宮の使用人さんが時間を尋ねてくれて、コチラの都合に合わせて料理を運んできてくれる。 軟禁されている身とはいえ、使用人さんはプロ意識が強いらしく、コチラを客人として遇してくれて気分は悪くない。 人の思惑はどう動いているのか分からないが、アチラに懐柔する意図は見当たらず、疑うだけ無駄かと思い使用人さんの前では警戒心が緩まるようだった。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加