勇者と脇役

2/14
前へ
/54ページ
次へ
「来たか……勇者よ、待ちくたびれたぞ?」 黒ずくめ、の比喩がぴったりな銀髪赤眼の男が玉座に座ったまま、勇者のユウキ以下その仲間たちに言い放つ。 「あんたが魔王か……」 ユウキは聞くまでもない事を言い、静かに剣を抜いて気を引き締める。その様子に魔王は「クク」と噛み締めた笑いをもらし、悠然と立ち上がる。 「貴様を始末すれば、世界は我が手に落ちる。 人類を滅ぼし、魔物たちの世を始めよう……」 魔王はマントをはためかせ、緩慢な動きで構えを取る。 「御託はいいからさっさと来いよ、引きこもり! 俺がお前を倒してそれで終わりだ! 理解したか?」 ユウキは魔王を罵倒して挑発し、剣に魔力を纏わせる。剣は青白い光を輝かせ、斬るべき対象が来るのを待つ。 「……小僧、安心しろ今すぐ」 魔王がそう言い、姿がブレたと思うとユウキの目の前に現われる。 「息の根を止めてくれる!」 魔王は押し殺した怒りと共に手刀をユウキの心臓目がけて突き出す。 ユウキは剣の腹で軌道を変え、肩の防具を破壊されるに止め、魔王が突き出した右腕を肩から切断する。 一瞬の出来事で、ユウキの仲間たちは呆気に取られ動くことができなかったが、苦悶の表情を浮かべ後ろに下がる魔王を見て、各々の行動を開始する。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加