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「やれやれ貴様たちは思った以上にやるようだ。
我が影をああまで簡単に破るとは……」
ユウキたちは魔王の声が聞こえた方向、玉座の方を向き確認する。
そこには十全の姿、玉座の間に至り対峙したときと変わらない、傷一つない魔王がいた。
「下等な種族と位置付けている手前このような手段を取りたくなかったのだが、仕方あるまい……」
魔王が何の動作もなく魔法陣を出現させる。
魔法陣が激しい光を散らすと、中から人が二人現れた。
一人は燕尾服を来た執事然の男。その目は虚ろで何を見ているか分からないが、綺麗な姿勢で直立している。
もう一人は猿わぐつを噛まされ、鎖で手首を縛られ、純白のドレスを着せられたマキが横たわっている。
「さてさて勇者よ、貴様の大切な者がここにいる理由は理解できるな?」
魔王は愉快そうに笑い、非常に嫌味ったらしくユウキへと語り掛ける。
「この者の生命が惜しくば、我が前にて自害しろ……。
勇者だけで構わないぞ? 後でそこに居る二人に身柄を返してやろう」
魔王はマキの手首を掴み上げ、掴んでない方の手に黒いモヤを収束させ、心臓のある位置まで近付ける。
タリアとパトリシアは小さく呻くが、ユウキの背中を見、ただならぬ雰囲気に閉口する。
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