勇者と脇役

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魔王の思考は突如停止してしまう。 マキが思いっきり魔王の爪先を踏みつけ、踵を振り上げ急所を蹴り、拘束の緩まった手から逃れ、駄目押しに肘を振り回し鳩尾に入れる。 体重差が思いの外あったため、一連の動作が終わるとその反動でバランスを崩し、玉座の壇から転げ落ちてしまう。 マキは両腕で顔を庇い、階段の角を身体の至る所にぶつけ、ユウキの足下まで転がっていく。 良いところに手を構えていたユウキに抱え上げられる。 「ユウキ、……地球に帰ったらお前には洗いざらい吐いてもらうからな!」 「……覚悟しとくよ」 マキの頬はほんのり朱に染まっているように見える。 普段絶対にしない格好、一生してやるかと思っていた格好を、あろうことか一番よく知るユウキに見られマキは羞恥に悶えているのだろう。 ただでさえ背中がばっくりと開き、鎖骨が露出する仕様となっているドレスに加え、 階段を転げ落ちてきたので、ドレスの至る所が破れて肌が露出してしまっているのもまた一因だろう。 マキは、目尻に涙を溜めて不満をぶちまける。 「巻き込んだヤツが責任とれ!」 ユウキは虎をも喰わんとせん形相のマキにほほ笑みかけ、「もちろんそのつもりだ、最後まで取ってやるさ」と答えた。
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