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龍と成った魔王は銀色のヒゲと赤い目が人間体であったときの名残を僅かに残すのみ。
漆黒の鱗は濡れた髪のように光を反射し、腕と脚は筋と骨で膨れ上がり、大きな顎に咥内にはびっしりと牙が敷き詰められている。
ユウキは、邪悪さと残忍さを併せ持ち、しかし何処か気高さと美しさを内包するその姿に畏怖してしまう。
マキは何も恐れていない。命を賭けられる状況に酔っているとさえ思えるほどに、爛々(らんらん)と瞳を輝かせている。
マキは片手に剣を預け、空いた手でドレスを裂いて、脚を臆面もなく出し、動きやすいようにする。
黒龍は咆哮を発し、突進してくる。巨体の割に動きは迅速で、マキを目がけて一直線に向かってくる。
マキは剣を地面に突き刺し、腰を引いたかと思うと片足で地を蹴り、剣の柄を基点にしバック転の要領で身体を振り上げる。
黒龍の顎が蹴り上げられ上体が浮き、勢いが完全に止められる。
亜形のサマーソルトを決めたマキは、身体を一回転して戻って来た勢いそのまま、剣を地面に走らせ切り上げる。
それで止まらずヨコハチ(∞)を描くように再度切り上げ、バッテン(×)の頂点を流れに逆らわず殴り付け、後退する。
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