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マキは追撃はせず、バックステップを何度か踏んで大きく距離を取った。
マキは動きを止めた途端に、冷や汗が全身に吹き出し、脚が抜けて崩れる。辛うじて剣を支えにして膝立ちしている。
動き自体は完璧で何もなかったマキだが、常人にできる運動でない上、
質量差が非常に大きい相手で速度の乗った状態に打撃を加え続けたセイで、
筋を傷め、衝撃で身体が思うように動かなくなったのだ。
『資格者たる勇者が剣を掴み、殱滅対象の魔王と戦うとき力を最大限引き伸ばす』
『歴戦の勇者の動きをトレースし、最適と思われる動作を実行する』
という【聖剣】の2つの特性は強大な力を発揮する代償に、
マキの体力と肉体を一気に限界まで削ったのだった。
黒龍こと魔王は自身の体長を人間サイズにまで縮め、マキを見下ろし両手と口に黒いモヤ、
──人間体とは比べものにならないドス黒さと大気を震わせるほどに圧縮し密度を持ったもの──
を収束し、連結させ、光を奪う黒いブレスを解放し、マキを飲み込んでいった。
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