勇者と脇役

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「勇者とは魔王に勝つべき存在」 「勇者とは勝利を約束されし存在」 「勇者とは永遠の中で生き、今を生きる存在に非ず」 「勇者とは希望であり理想の象徴」 「故にそれ以外の何も宿さず、ただ望まれるままある」 全てを震わす黒いカタマリを見据えながら、マキは朗々として詩を読むように言葉を紡いでいく。 「無私であれど意志はあり、時にそれは使命に逆らうモノ」 「義務を忘れることはなく、何時如何(いついか)なる刻も己とひた向きに向き合うモノ」 「我、答えを見つけし刻、至高の道へと他の者を導かん」 「我、此処に【真名】を示し魂を解放せん」 最後の節まで読み終えたマキは、ユウキの方を見て拭き目がちにこう言った。 「こんなハズカシイこと言ったの忘れろよ……」 ユウキはマキへの微笑みを絶やすことなく黙って頷いた。 マキが詩を全て読み終えると、【聖剣】は名を示す通り剣身から神聖な光を放ち始める。 ユウキは最後の力を振り絞って立ったマキの腰に腕を回して支え、【聖剣】の切っ先が魔王の方に向くように、もう一方の腕を剣を握るマキの手に下から添わせ支える。
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