418人が本棚に入れています
本棚に追加
「勇者とは魔王に勝つべき存在」
「勇者とは勝利を約束されし存在」
「勇者とは永遠の中で生き、今を生きる存在に非ず」
「勇者とは希望であり理想の象徴」
「故にそれ以外の何も宿さず、ただ望まれるままある」
全てを震わす黒いカタマリを見据えながら、マキは朗々として詩を読むように言葉を紡いでいく。
「無私であれど意志はあり、時にそれは使命に逆らうモノ」
「義務を忘れることはなく、何時如何(いついか)なる刻も己とひた向きに向き合うモノ」
「我、答えを見つけし刻、至高の道へと他の者を導かん」
「我、此処に【真名】を示し魂を解放せん」
最後の節まで読み終えたマキは、ユウキの方を見て拭き目がちにこう言った。
「こんなハズカシイこと言ったの忘れろよ……」
ユウキはマキへの微笑みを絶やすことなく黙って頷いた。
マキが詩を全て読み終えると、【聖剣】は名を示す通り剣身から神聖な光を放ち始める。
ユウキは最後の力を振り絞って立ったマキの腰に腕を回して支え、【聖剣】の切っ先が魔王の方に向くように、もう一方の腕を剣を握るマキの手に下から添わせ支える。
最初のコメントを投稿しよう!