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光が晴れると、ワケの分からないところにいることを瞬時に理解した。
目の前には、中世の騎士のような甲冑姿の人間が覆い尽くさんばかりに立ち並んでいる。
ドッキリ番組にしては手の込んだことを……、と現実逃避したくなった。
さっきまで薄暗かった屋外にいたはずなのに、いきなり清潔感溢れる白い石畳と壁、天井のある屋内にいる、となったら目を疑う。
確認のために、転がってる幼なじみを、右足の靴を脱いで、日頃鍛えているらしい腹筋をめがけてシュートする。
鈍い音と苦しそうな呻き声が響き、現実なんだとはっきり認識する。
フルフェイスの甲(カブト)を被っていて表情は読めないが、騎士たちも予想外の行動に動揺しているようだ。
騎士の最前列に並んでいる内の一人が、腰に手を掛け、一瞬の内に距離を詰めて、首に両刃の剣を差し向ける。
「貴様、何をしている!?」
甲越しで曇っているが、声の高さからいって女性の物。
特に理由もなく人を蹴ることに驚き憤ったのか、はたまた一目惚れしたコイツに、暴力を加えたのが許せなくて殺気だったのか。どちらかだろう。
ホント、ワケの分からないところでも女に見初められるなんてね。
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