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「それじゃあ山中、入ってこい」
担任教諭の声を受け、扉が開き一人の女子生徒が入ってきた。
それと同時に男子からは歓声が上がり、女子からは溜め息が零れる。
「山中、自己紹介を頼む」
「はい」
鈴のように透き通った声で返事をした山中はチョークを手に取り、名前を書き上げていく。
やがて一通り作業を終えると、チョークを置きこちらを振り返った。
「山中さくらです。皆さんこれからよろしくお願いします」
再びの歓声。それも仕方のないことかもしれない。
顔立ちは整っていて、髪の毛は肩下までの黒髪ストレート。身長は平均より少し高めでスタイルも良い。
テレビ画面越しに見たとしても少々飛び抜けた容姿の持ち主だ、それが一般的な場に現れれば騒がずにはいられないだろう。
更に何か浮世離れした存在感の希薄さがあり、それが彼女の美しさに拍車を掛けていた。
「静かに!山中の席は中央の一番後ろだ。近くの席の奴らは山中をフォローしてやれよ。以上でホームルームは終わりだ!次の授業の準備しろよー」
担任が教室から居なくなり"山中さくら"が席につくと、クラスの連中が男女問わず一斉に群がった。
しかし、俺はその場を動く気にはとてもなれなかった。
「・・・どうかしたのか?」
「いや・・・」
山中さくらを見ると、クラスメイト達に質問攻めにされて苦笑いを浮かべているところだった。
「なんでもない」
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