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「・・・行ってきます」
返事なんか返ってこない事を知りながらも、なんとなく習慣付いてしまったこと。
・・・まだHRまでは余裕の時間。
左手の腕時計を覗きながらそんなことを考える。
腕時計の天板は真っ二つに割れ
ボロボロだったけれど、今なお力強く時を刻んでいた。
戸締りを確認した後、自転車に跨りペダルを漕ぎ出した。
両親が死んだのは俺が12歳の頃。
表向きの発表では病死ということになってるけれど、その実二人の死因は病気などではない。
・・・呪い。
この現代においてオカルトとして数えられる代表的なもの。
それが二人の命を奪った。
母方の家系は代々霊感が強く、その為除霊を生業としてきた。
俺の母親もその例に漏れず、むしろ家系の中でも霊感の強い部類であり、除霊士として活躍していた。
父親に霊感は無かったが、母親の除霊の仕事のアシスタントとして所謂こちら側の世界に携わっていた。
その仕事中、力の強い霊を除霊しようとした母親は結果敗北し、父親共々呪いを受け、そして命を落とした。
それが、俺が親族から聞いた事の顛末である。
祖母が俺を預かると申し出たがそれを拒否(金銭的扶助は甘んじて受け入れた)し、現在に至る。
元々両親は仕事柄各地を飛び回っていたし、兄弟も居なかったので俺を取り巻く環境にとりわけ大きな変化は無かった。
敷いて言えば、俺を見る周囲の視線に憐れみや同情が追加された事ぐらいだろうか。
それすらも高校二年となった現在においては無くなった訳だが。
(県外の私立高校に通っているため地元の友人は一人も居ない)
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