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『さびぃー!やっぱ雪降ると格段に冷えるよな?』
明らかに大袈裟な素振りで寒いのをアピールするユウキ。部室で話し込んでいる間に地面は白く染まっていた。相変わらず雪はしんしんと降り続いていた。
『これ以上積もらない内にさっさと帰ろうぜ?』
ユウキが傘を開き、早く入れよと言わんばかりにこっちを見てくる。しかし、いざ相合傘で一緒に帰るとなるといくら幼馴染みとはいえ、恥ずかしい。しかもあの小さい折り畳み傘では尚更だ。
「…うん」
恥ずかしいという感情を自分の内に押し殺して、ユウキの隣りに行く。
『それじゃ行くぞ』
少し歩いて気付く。ユウキが小さい折り畳み傘を私が濡れないように私側に寄せている。ユウキの右肩にはすでに雪が積もっている。
「ユウキ、右肩濡れちゃうからもっと寄りなよ」
そう言って私はユウキが入れるスペースを作るため左側にずれる。すると、傘と一緒にユウキがそのスペース埋める。これでは全体的に左に寄っただけで、ユウキが濡れることには変わりない。
「私は入れてもらってるんだから、少しくらい濡れても大丈夫。ユウキが濡れたら傘持って来た意味ないよ」
するとユウキは、
『ばーか。お前を濡らしたら、それこそ入れてやってる意味ねーだろ』
ドキッとした。
「…うん、ありがと…」
それ以上何も言えなかった。ユウキも照れくさそうに頭を掻いている。
しばらくして、ユウキの家が見えてきた。
「じゃあここまで送ってくれてありがとう。また明日ね」
傘から出ていこうとする私を呼び止めるかのように、
『ばーか。約束したじゃんか。俺はお前を家まで送るって』
「でも、私の家…」
『いいから!』
私の言葉を遮るようにユウキが言い放った。
「…うん、ありがと」
―20秒後。
『はい、到着ぅ~♪』
「だから大丈夫って言おうと思ったのにー」
何を隠そうユウキの家と私の家は1件間に挟んだだけのご近所さんなのです。
『ま、家まで送るって約束だったからな♪』
「アハハ☆でも本当に助かったよ。ありがとね」
『どう致しまして♪』
ユウキはまるで使用人のような素振りで深々と頭を垂れた。
『それじゃまた明日な!』
「うん、また明日☆」
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