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舞台は昨年の10月まで遡る―。
秋の新人戦。
9回オモテ。2アウト2・3塁。0‐1で虎ノ浦のリードという場面。あとワンアウト取れば選抜出場がかかった場面。
龍王のバッターは田中マサヒロ。対する虎ノ浦のピッチャーは斎藤ユウキだ。田中はここまで3打数ノーヒット。
1球目。アウトコース低めに148km/hのストレート。ストライク。
2球目。同じくアウトコース低めに130km/hのスライダー。ファウルボール。
そして、3球目。ユウキがこの日投げた渾身の150km/hのストレート。
カキーン!
その球がユウキの右手に向かって襲い掛かる。
マウンドにうずくまるユウキ。
田中のタイムリー内野安打。
1‐1。
そして、ユウキはマウンドを降りた―。
結局、虎ノ浦は龍王に2‐1で破れ、選抜は龍王に決まった。
ユウキは、ベンチでタオルを頭にかけたまま、きっと、泣いていたんだと思う。そして、その痛めた右手で書き上げたのが、例の書だ。
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