2月15日

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舞台は昨年の10月まで遡る―。 秋の新人戦。 9回オモテ。2アウト2・3塁。0‐1で虎ノ浦のリードという場面。あとワンアウト取れば選抜出場がかかった場面。 龍王のバッターは田中マサヒロ。対する虎ノ浦のピッチャーは斎藤ユウキだ。田中はここまで3打数ノーヒット。 1球目。アウトコース低めに148km/hのストレート。ストライク。 2球目。同じくアウトコース低めに130km/hのスライダー。ファウルボール。 そして、3球目。ユウキがこの日投げた渾身の150km/hのストレート。 カキーン! その球がユウキの右手に向かって襲い掛かる。 マウンドにうずくまるユウキ。 田中のタイムリー内野安打。 1‐1。 そして、ユウキはマウンドを降りた―。 結局、虎ノ浦は龍王に2‐1で破れ、選抜は龍王に決まった。 ユウキは、ベンチでタオルを頭にかけたまま、きっと、泣いていたんだと思う。そして、その痛めた右手で書き上げたのが、例の書だ。
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