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『よっ!』
いつも通り、おちゃらけた声が私の背後から聞こえた。
その声の主は同じクラスの斉藤ユウキ。家が近いため、行きの通学路では一緒になることが多い。そのこともあってか、一時期私の周りで二人は付き合ってるんじゃないか、と噂になったことがある。だけど、こいつと恋愛に関する話なんて一度もしたことがない。
『今日もさびぃな~』
自分の肩を抱くようにして大袈裟に震えるユウキ。
「明後日くらいには雪が降るんだってさ」
朝の天気予報の内容をそのまま伝える。
『マジかよ!?グラウンド使えなくなんじゃん!』
野球部の選手にとってグラウンドが使えなくなるというのは2つの面で嫌なものらしい。
1つは実戦的な練習が出来なくなるから。野球というのは広いグラウンドあってこそのスポーツ。打って、走って、守るという、いわゆる『走・攻・守』というのは広いグラウンドで養われていく。そんな大切なグラウンドが使えなければ野球は出来なくなるのだ。
そして、もう1つの理由が…
「大丈夫。雪降ったら地獄の階段ダッシュだから♪」
満面の笑みでユウキに言ってやる。
『……』
そう、走り込みや筋トレといったキツい練習メニューが多くなるからだ。これは基礎体力を鍛える重要な練習だけど、まずこのメニューが好きな部員はいない。
あ、ちなみに彼は野球部のエースで、私はマネージャー。マンガや小説の世界ではよくある関係だけど、気にしないで。
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