風情を気取る世間知らず

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人という物は、なんとつまらない生き物であろうか…、 商店街を歩く人々の雑踏の中、その中でただ一つ小さな灰色の影が、何か物憂げな表情で歩いていた。 自分よりも遙かに大きい物達が振り下ろす脚を意識してかしないでか、体をくねらせて避けながら進む姿はどこかしなやかで、一見美しささえも感じられる。 人より少しばかり高く見える空には、もう秋になるというのに今更本領を発揮している太陽が燦々と輝きを発していた。 やはり人とはつまらない生き物だ。 生きるために嫌だ嫌だと言いながら人生のほとんどを働き為に費やし、 そんな自分の人生にいつもあきらめを感じている。 自分は常に被害者だと考え、自由もないしなにもできないと思いこんでいる。 なぜ生まれたからにはとことん楽しんで生きていこうとか、 もっと勝手気ままに生きようとか、 そういうことは考えないのだろうか…、 大きい足ならどんなに遠いところでも歩いていけるだろうし、 肉球の無い手なら自由にドアノブを回して外に出て、たくさんの世界を知ることができるというのに奴らは外に出るどころか望んで内に入ろうとする。 輝かしい可能性を秘めているのに、自らそれを殺している。 全くもったいないものだ。残酷だ…。 私が考えるに、人というのは自分の行動の結果が予測の範囲を超えるのが怖いのだろう。 今見えない未来なら少しくらい予想外を期待してもいいだろうに…。 そのくせ何かにつけて身勝手で、一つ一つの行動はまるで自分たちだけがこの社会に生きていると言わんばかり、全く傍若無人もいいところだ。 人が聞いていたのならすぐさま弁解していたことだろう、場合によっては言葉ではすまなかったかもしれないが…、 だが、彼には言葉話通じても納得させるに至ることは絶対に無いし、それについてなにも不思議に思うことはない。 根本的に考え方が違うのだ。
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