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事故から2ヶ月後、病室のドアをノックする音が聞こえた。
「お母さん?今日は早かったのね」
いつもならお昼の配膳の頃に母が来てくれる。
まだ、……多分10時を少し過ぎた頃だろう。
「………」
「お母さん?……じゃ、ないの?」
何の香りだろう、……花?
「初めまして、……杉田一樹と言います」
「杉田、……さん? もしかして事故の?……バイクを運転されていた方ですか?」
「はい、……すみませんでした、俺のせいで、……すみませんでした!!」
「………」
余りにも突然の訪問に、直ぐには言葉が見つからない。
「すみません、……帰ってください」
「えっ?」
「出て行ってください」
「すみませんでした、……俺がもっと注意していれば……」
「あの事故は、……私が飛び出したのが悪かったの、……でも、帰ってください」
「分かりました、……又来ます」
自分の不注意で起こってしまった事故だと分かっていたけれど、……暗闇の未来を悲観し落ち込んでいた私は、一樹に冷たい言葉を投げつけていた。
一樹が帰った後にも、微かに優しい香りが漂ってる。
それはラベンダーの香りだった。
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