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店の名は「幸福庵」。
町のはずれにあるいわゆる駄菓子屋で、ほかの店より圧倒的に安いのだが子供たちはよりつかない。いや、近づきさえしない。
なぜなら……
木造づくりの外観はボロボロで、何故か店頭に置いてある人体模型が子供たちを恐怖のどん底に陥れるのは容易なことだった。
それでも勇気を振り絞って店内に入ると、木が腐ったような匂いが鼻に突き刺さり、床は歩く度にギシギシと唸った。
そして決まって店の奥からあの声が響く。
「いらっしゃい」
幸福庵の店主はいつもニコニコと笑っている気のよさそうなおばあさんなのだが、ただ1つ不気味なのは何時まで経ってもおばあさんのままだということだ。
齢80を超える人々は口を揃えてこういう。
「ワシ達が子供の頃からあの人はおばあさんじゃったよ」
その店がいつからそこにあるか誰も知らない。
そして店主が何者なのかを知る者もいない。
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