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私は水の底に潜る。 水の底から太陽の日差しや照明の光を見るのが好きだ。 水泳が得意でもないくせに水泳部に入った理由がこれだった。 息を止め、水の底で光を見つめる。そうすると音も聞こえない。 きっと人魚はこうやって人間達を見つめていたに違いない。 「望!」 いきなり腕を引かれてプールの上へ上げられた。 私はぼんやりと私の腕を掴んだ彼女を見た。 怒ったように目をつり上げているのは友達の神宮寺桜(じんぐうじ さくら)ちゃんだった。同じ水泳部の彼女は長い黒髪を水泳キャップの中にきっちりと入れていた。 「その癖止めてよ…いつもヒヤヒヤすんだから。息止めるの長いし」 「有一の特技だからね」 笑いながら彼女に言うとまた呆れたように笑った。 彼女は綺麗だ。凛とした佇まいは同性の私でも見とれる。 「それより練習するよ?せっかく水泳部員なんだから」 「私は水泳部員でも桜ちゃんみたいなエースじゃないから良いんだよ」 私達はプールから上がると窓辺に近づいた。 この高校の室内プールはでかい。一応覗かれないように窓ガラスはくもりガラスになっている。
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