9人が本棚に入れています
本棚に追加
何故かは聞いたことはないけど、私が住んでいるこの街は雨が多くて梅雨、春雨、秋雨は絶対降る街。だから室内プールなのかもしれない。
バスタオルにくるまっていると桜ちゃんが仕方無さそうに笑った。
「望は息が長く続くんだから、ちゃんと練習したら結構泳げると思うよ?」
「息が長く続くだけだよ」
彼女は一つため息をついてプールに飛び込んだ。しなやかに動く体に綺麗な筋肉は馬みたいだ。
その綺麗な泳ぎに私は毎日みとれる。
私はあんなふうになれないから。
※※※※※※※※※※※
部活が終わって私と桜ちゃんは下駄箱まで足を進めた。
桜ちゃんは水泳部のエースだけど普通の女の子だ。
もし、彼と付き合えたら相合い傘をしたい。映画を見たい。手を繋ぎたい。お弁当を一緒に食べたい。
尽きる事のない少女の願いは可愛らしく、時に残酷だ。
私は笑顔で彼女の話を聞きながら綺麗な瞳を見つめる。
彼女の綺麗な体の次に魅力的な瞳。私は彼女が自慢で羨ましい。
そして大切な友達。
「でも、きっと無理」
「え?」
「だって…私、背が高いから」
最初のコメントを投稿しよう!