第5章

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「王朝からの使者たる我らに不快な思いをさせているのだ!」 郭嘉が唾を撒き散らす。 「孫策は糾弾されて当然だ」 「おい、鼻デカ小僧」張昭殿が低い声で言った。 「は、鼻デカ」郭嘉が呟き、自分の鼻に触れる。  張昭殿は歩を進め、蒋欽と夏侯惇の肩を押し、郭嘉と対峙した。 「さっきから、王朝、王朝とほざいておるが、自惚れもたいがいにしておけよ」 張昭殿の物言いは凄み抜群だ。郭嘉がたじろいでいる。 「貴様らは一群雄、曹操の使者だろうが! 王朝、王朝ほざくな! 耳触りじゃ!」 「孫策は」郭嘉は奥歯をギリリと鳴らし、絞り出すように言った。 「孫策はどこに居るんだ」 「ですから」周瑜殿が言う。 「本日は政務に関する重要な用が」  広間の出入口扉が開く。上半身半裸で弓をたすき掛けにした孫策様が入ってきた。 「おぉ、随分と盛り上がっているようじゃないか」  遅れて、鹿の後ろ足を引きづりながら陳武が広間に入ってくる。周瑜殿が額に右手の指先を着け、瞑目し、小さくかぶりを振った。 「ほぉ」と郭嘉が息を吐き、小さな目を細めて孫策様を見る。 「孫策軍では狩猟を政務の重要な用と呼ぶのだな。面白い。これは我が曹操軍には無い発想だ」
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