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「孫策様!!」。尖った声を上げたのは小喬。
「本気なの? 本当に姉上を置いて行く気なの?!」
孫策様はなぜか大喬を周家に置いていくと言った。見送りの並び、一番右端で大喬は両手を交差させ、己の肩を抱きしめ、小刻みに震えている。
「本気だ。大喬は連れていかない」
孫策様が言うと小喬は二重瞼の大きな目を見開いた。
「どうしてよ! あんまりだわ! これじゃあ姉上が」。「孫策様ぁぁ!!」
小喬が早口で捲し立てていると、突如大喬が叫んだ。そして孫策に向かって一直線に走り込んでくる。
大喬は孫策様の胸を叩きながら大声で泣きじゃくった。
「どうして私はついて行ってはいけないの!! どうして貴方は私を顧みてくれないの!! どうして貴方は私に触れてくれないの!!」
普段、感情を表に出さない大喬。堰を切った川のように流れ出す感情。私は驚きで身が固まった。
「こんなに……こんなに私の心は貴方でイッパイなのに……貴方の瞳には私の影すら写っていない!」
「大喬」。孫策様が大喬の肩にそっと触れた。大喬はそれを振り払った。
「離縁して下さい」。大喬は震える声で言った。
「私を真っ直ぐに見てくれないなら、この場で離縁して下さい!!」
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