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静かな部屋。
明かりをつけていないのに明るいのは、カーテンの隙間から通る光のせい。
そこに私は立っていた。
黙ったまま、自分の手元にある『もの』を見つめていた。
ねぇ。
あなたには聞こえないだろうけど。
――もう、手遅れだよ…
もっとはやくにわかっていれば、
きっと、正しい未来へ辿り着けたかもしれないのに。
もう、引き返せない。
私は、その場に持っていた『もの』を落とし、そのまま部屋から出た。
光が照らしていたのは
『月へ』と書かれていた、便箋。
大切な人を、
こんなにも自分を大切にしてくれた人を、
――私は、裏切ったんだ。
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