第1話 少年

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なんだか妙に晴れた気分になった少年が本を棚に戻すと、背後から足音が聞こえた。 すぐに振り返るがそこには誰もおらず、かなり離れたカウンターに人間が座っている。 確かに、すぐ後ろで歩く音がした。 しかし、その人間は座っているのだ。 一気に少年を寒気が襲った。 あれは本当に人間なのかと恐怖を感じる。 「そんな所に立ち尽くしていないで、こちらへどうぞ。」 声を発した生き物が男だと理解した。 しかし、さらに人間だとは思えなくなった。 あんなにも離れた所にいるのに、声が耳元から聞こえるのだ。 低く、腹の底に響く、いつまでも耳の奥に残る声。 「さぁ。」 促されて、暫く固まったままだった少年は、一度ごくりと唾を飲み込み、カウンターへと向かった。 冷や汗すら出ない。 カウンターにつくと、男はぺこりと軽くお辞儀をした。 「ようこそいらっしゃいました。」 「あ…あの、ここって何の店なんですか?」 「ここは『自殺屋』ですよ。外に看板があったでしょう。まさか、分からずに入って来たのですか?」 「いえ、そうじゃなくて……どんな店なのかなって…。」 少年が弱々しい声で尋ねると、男は立ち上がり、少年に背を向けて話し始めた。                「そのままですよ。ここは、自殺について知って頂くための店です。先程、本を一冊お読みになったでしょう。」 くるりと突然振り向き、男は少年に言った。 いまいち、どんな店なのかは理解できない。
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