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なんだか妙に晴れた気分になった少年が本を棚に戻すと、背後から足音が聞こえた。
すぐに振り返るがそこには誰もおらず、かなり離れたカウンターに人間が座っている。
確かに、すぐ後ろで歩く音がした。
しかし、その人間は座っているのだ。
一気に少年を寒気が襲った。
あれは本当に人間なのかと恐怖を感じる。
「そんな所に立ち尽くしていないで、こちらへどうぞ。」
声を発した生き物が男だと理解した。
しかし、さらに人間だとは思えなくなった。
あんなにも離れた所にいるのに、声が耳元から聞こえるのだ。
低く、腹の底に響く、いつまでも耳の奥に残る声。
「さぁ。」
促されて、暫く固まったままだった少年は、一度ごくりと唾を飲み込み、カウンターへと向かった。
冷や汗すら出ない。
カウンターにつくと、男はぺこりと軽くお辞儀をした。
「ようこそいらっしゃいました。」
「あ…あの、ここって何の店なんですか?」
「ここは『自殺屋』ですよ。外に看板があったでしょう。まさか、分からずに入って来たのですか?」
「いえ、そうじゃなくて……どんな店なのかなって…。」
少年が弱々しい声で尋ねると、男は立ち上がり、少年に背を向けて話し始めた。
「そのままですよ。ここは、自殺について知って頂くための店です。先程、本を一冊お読みになったでしょう。」
くるりと突然振り向き、男は少年に言った。
いまいち、どんな店なのかは理解できない。
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