第1話 少年

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“自殺について知る店”とは、どういうことなのか。                     そのままの意味なのだろうが、何せ少年は過去にそんな店を、見たことも、聞いたこともなかった。 だから想像がつかなかった。 「あの、じゃあ、ここは自殺の本を売る本屋なんですか?それとも、図書館?」                その問いに男は小さく首を横に数回振った。 「どちらとも言えませんね。本をお売りする訳ではありません。貸し出しするのです。しかし、図書館とは異なります。一人にしか、貸し出せませんから。」 「一人?」 「ええ。」 そこまで話して、少年も男も黙った。 沈黙が、二人の間の空気にのしかかる。 男は、俯いた少年の顔を覗き込んで声をかけた。 その質問に、少年の息が詰まる。 「自殺を、したいのですか?」
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