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その一言を聞いただけで、少年はこの男に今までの人生を見透かされたような気分になった。
少年は生唾を飲み込み、ゆっくりと一度頷く。
すると、男はにこりと笑って、カウンターの上に一枚のカードを取り出した。
「それでは、あなたにこの店を貸し出しましょう。さぁ、手を出してください。」
店を貸す、という男の言葉に戸惑いながら、少年は手を出し、言われるままにカードの上に置いた。
ひやりと冷たい感覚が掌を伝う。
「ここにあなたの名前を。思い浮かべるだけで結構です。」
そう言われて少年が自分の名前を思い浮かべると、カードに独りでに名前が浮かび上がった。
黒いカードに赤色の名前。
なんとも不気味な配色である。
「これでこの店はあなたのものです。」
「僕の…もの?……あの、お金とか要らないんですか?」
「いえいえ、必要ありませんよ。ただ、少し決まり事、というか、注意がありますので、覚えて帰って下さい。」
そう言って、男は再び、カウンターに腰を下ろした。
真っ直ぐ少年を見つめ、口をひらく。
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