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アリスは今、全身のダメージから魔法の詠唱に集中する事はできないだろう。
もし俺が魔法を使えたならまだ余裕があったのだが…ダメだ。左腕がイカれたせいで指輪を使うこともできないし、かと言って詠唱もこのダメージては集中できそうにない。
「げほ…ハァ。…一騎討ちって…訳か」
「そ…う…なる…な」
意を決し、アリスと向き合う。
恐らく次の一撃で勝敗が決するだろう。
それ程にお互い受けたダメージは酷かった。
俺達は剣を構えて睨み合う。
この時間が、俺が俺の欲求のままに動けた時間がもう終わってしまう。
それがたまらなく惜しく感じるが、今はそこに意識は向けられない。
最後の打ち合いは先に集中力が切れた方が負けるのだから。
アリスが身を屈め距離を詰めてくる。
それに合わせるように俺も剣を握る手に力を込めて、アリスに肉薄した。
ガキィィン!と、剣が打ち合いに負けて飛んでいく音が聞こえた。
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