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ピンポーンとチャイムの音が聞こえた。おっさんが帰ってきたのかと思って玄関のドアを開けた。
「和にぃやなくて残念やな」
「修…さん。」
期待外れの訪問者に俺の顔は引きつって、苦笑いを浮かべる。修はそんな俺を楽しそうに見ては、笑った。
「取り敢えず入れてや、中。」
「あ…はい。」
修はさっさと靴を脱ぎ、自分の家同然のような顔付きをしてリビングで安らぐ。それがなんだかモヤモヤして、胸の辺りが変だ。
「チビ…ねぇ。」
「何ですか…?」
修は国民アイドルだ。俺だって男を綺麗だと思ったのは悔しいけれどこの人以外は思い浮かばない。その修に見つめられ俺はドキリとする。何かを見透かした…そんな目だったから。視線を逃したいのに、逃れられなかった。
「ほんまは橘 幸人(タチバナ ユキト)って名前なのになー?」
ーーあぁ、やっぱり…
この人は俺を知っている。俺の過去も知ったのか?
「かんにんな?俺は寄り付く虫は殺すタイプやねん。和にぃから身引きや?」
「何でお前にそんな事!!!!」
殴りそうになるのを必死で押さえた。
「なんでって、好きやからや。」
「....は?だって兄弟じゃ.......。」
修は俺の髪を握り、押さえ付けた。
壁を背中で思いっきり打ち付ける。
「それが、何なんや?」
修は冷たく言った。
「好きで悪いんか?兄弟やからダメなんか?..そんな事関係あらへん。俺らは兄弟じゃないしな…。」
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