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「俺と和にぃは異母兄弟や。本当の兄弟やない…。だけど、お前に分かるか?お前に何か分かるんか?兄弟やから…兄弟やから伝えることも出来んねん…。」
「でも、俺も…好きだから…。」
俺を掴んでいた手がずるりと肩に触れ落ちていく。修はそのまま俺を見て笑った。力無く、くしゃりと、笑った。
「お前、素直に全部言いや?和にぃはそれを待ってるで?橘 幸人。」
名前が呼ばれる。
大嫌いな名前が、隠していた名前が。
でも、いつか伝えなければと思っていた。
伝えないと、変わっていく自分をきっと嫌いになるから。隠すのも、もう嫌だから。
ーー全てをおっさんに知って欲しい…。
おっさんは笑うかな?
嫌われたくなくて、過去の自分が嫌いで、向き合う度胸もない俺を。
「修さん…俺は…。」
「俺の分まで頑張りぃーや?」
耳元で囁かれた声は、優し過ぎて、切な過ぎて俺は泣きそうになった。
「はい…」
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