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<修目線>
バタリと閉まったドアを俺は振り返らずに前へ進んだ。
ーーこれで…終いやな…。
どこか寂しくて、でもどこかスッと軽くなっている俺がおった。空を見上げると、今までの空は笑っているみたいで虚しくなっていたのに今日は優しく俺を包んでくれそうな空色をいている。
ドカドカと歩いていたら携帯電話が鳴り響いた。
「俺だ。」
「誰やねん?」
一番嫌いな奴からの電話。
「分かるだろ?俺が頼んだんだからな。」
頼んだ内容は俺には残酷だった。だけど、しゃーないやん?俺は和にぃが好きやから…。受ける事しか出来ないんよ。
「大丈夫やで、あの調子やったら言うやろ。」
ハハハと軽い笑い声が出た。自分でも驚くほどに軽い声だ。
「…………泣くな。」
「俺は泣いて……」
言い終わるより早く俺の頬を落ちていく。それは止まることなく、後から後から溢れた。
「……あれ?おっかしいなー??俺、、」
本当は分かっている。自分が一番にはなれない事もずっと昔から知っているのに、それでも好きで…和にぃに彼女が出来たら嫉妬して色々不安定になって荒れて…和にぃ中心で俺は動いているのに………。
ーーなんで俺やダメなんかな………?
「俺…………」
「すまない。」
背中に温かさを感じる。首に伸ばされた腕の強さを感じる。優しい、空みたいや。
「まだ俺は和にぃ好きや~俺のにしたい~」
ワーワーと泣き叫ぶ俺をあいつは優しく優しく抱き締めた。本当、大嫌いな奴なのに落ち着く俺がいる。
「すまない…。」
その声が俺の初恋に区切れをつける。
もう、一生叶わないと諦めさせる。
俺は聞こえないふりをして、そっと泣いた。
ーー和にぃ……大好きや………。
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