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今日は何だか変だ。何時もは見える電気の灯りが外から見えない。
ーーチビ寝た?
疑問と不安が頭を廻る。足取りは重たくなって、一歩が怖かった。もしかしたらチビが居なくなっていて俺はまた独りになるのではないかと思うと寂しさよりも孤独の怖さの方が強い。
ーー孤独の怖さ…ね。
いつの間にか俺は独りから二人になっていた。
そうして独りの寂しさを忘れ、今孤独が怖いと思っている。
「ただいま」
真っ暗な部屋に投げ掛ける。
「....帰り。」
ボソリと小さな声が奥の方から聞こえた。
1つ息を吐く。安心に胸をなでおろし、電気の灯りをつける。
「おーい?」
チビの様子が可笑しいのは分かる。何かあったことも分かる。でも、俺はもう欲張りになってしまったから…。
「チビ?」
ちょこんと座った小さな背中に声かける。
その声に反応し、チビは振り向いて口をゆっくりと開き答えた。
「タチバナ、ユキト…」
「ん?」
1つ間が空き呆然としている俺にもう一度同じように言った。
「ユキト………俺の名前。」
欲張りになった俺にその名前は大きすぎる。
ーーやっとかよ…。
「…………俺の名前は、イノウエ、カズユキ」
自然と視線が交じり合う。俺はユキトを見つめ、ユキトは俺を見つめた。
「ごめんな…おっさん…俺、今まで言えなくて…。」
ホロリと、ユキトの頬を涙が流れる。
その瞬間、俺はユキトを抱き締めずにはいられなくなり、俺の腕のなかにおさめた。
「待った甲斐があるよ。こんなにも俺は嬉しくてたまらない…。」
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