1138人が本棚に入れています
本棚に追加
「和幸、あんた…何でそんなに美しいの?」
「母さん…?」
ある日突然、母は俺にそう問いかけてきた。
「あんたは綺麗になっていくばかり…私は…私は………ぁ。」
「何言ってるの?母さんは綺麗だよ!?」
「煩い、黙れっ!!!」
母は台所から包丁を取りだし、俺に向けたまま近付いてきた。
「煩い、煩い、煩い…。あんたが悪いの。美しいあんたが。」
そこには母は居なかった。
「かぁ………さ…。」
涙は零れなかった。溢れもしなかった。
一歩一歩近付いてくる母の姿が、スローモーションで時間が遅く感じた。
母の足が俺の足に当たる。
首元に金属のひんやりとした感触が伝わる。
「あんたなんか………あんたなんか………。」
一筋の涙が母の頬を伝う。
「あんたなんか……産まなきゃ良かった。」
最初のコメントを投稿しよう!