1105人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
「……愛されていたんだな。」
ふと思い出した記憶に微笑みを浮かべた。
父の記憶など人生で思い出す事何て無いものだと思っていた。幸せ何て物は空想。うわべだけのもの。そう思っている一人の男だった。
「何笑ってんのさ?キモ~。」
あの時チビに会っていなければ、そのまま思い続けていただろう。
幸せも、愛することも、知らないままだった。
「思い出したんだ。」
「……。」
「今更気付いていなかった事にな。」
「それって…何?」
"愛することの幸せ。愛される幸せ。"
何て歯が浮くような言葉だろうか。
口にするには勇気が無かった。
せめてもの頑張りは
「その内に言うよ。」
と約束した事かな。
「……ま、いいけどさ。おっさん、気付いてるかわかんねぇけど俺らって同じ漢字なんだ。」
「………?」
「ユキトって漢字は幸せって漢字だ。で、カズユキのユキも幸って漢字何だよ。運命感じるだろ?俺達幸せ者同士…っう…。」
口を塞いだ。
許し難かったからだ。許す訳にはいかない。何故なら、殺されそうなくらいに可愛いからだ。
許してしまったら俺はユキトに殺されるだろう。
「幸せだな。」
唇を離し、そっと見詰めた。
真っ赤に染めた頬のままチビは言ったんだ。
「同じく。」
愛は嫌いだった。
恋なんてしなかった。
ずっと、そんな自分が嫌だった。
嫌っていたのは求めていたからだろうと思う。
孤独で泣く事しかできずに、愛を恨んでいたんだ。
でも、今は幸せを口に出来るまで俺は愛を知ってしまったようだ。今更散々嫌っていたのに、悪くないとまで思っている。本当に悪くない。
寧ろ感謝する。
ーー有り難う。父さん母さん。
「っと、訂正だがおっさんじゃなく、和幸だ。幸人。」
「分かったよ、和幸。」
ーー和幸に産まれた事に感謝してるよ…。
*******名前の由来***完******
最初のコメントを投稿しよう!