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「―――つまらない」
彼女は不満げに、顔を歪める。
「貴方は恐怖というものを感じないの?私は妖怪の姫。貴方を殺すことなど容易いのよ」
「君は、僕を殺さないだろうよ」
「何故そう思う?」
眉をひそめて尋ねる桜華とは裏腹に、彼は涼しげな顔をしていた。
「君が―――人間の心を持ち合わせているから」
桜華が目を見開いた。図星を指されたのだ。
「妖怪の長が、人間の女子と恋に落ちてできたのが…君だ」
その言葉に、桜華は木を飛び降り、目にも止まらぬ速さで彼のもとにたどり着く。
気付いたときには、桜華の鋭い爪が、彼の喉元に付きつけられていた。
その顔は、まさに鬼に等しいほど憎しみをさらけ出している。
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