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まだ陽が登りきらない頃、突然大きな音が宿の一階から響いてきた。
「な…なんだ…!?」
イヴと李雷雷は急いで飛び起き、イヴは杖を李雷雷は銃をとっさに持ち、同時に部屋を飛び出した。
二人の視線が一瞬合う。
二人は一時的な同盟を結んだ瞬間である。
階段を急いで駆け降りた二人は、受け付けに向かった。そこでは宿主ニコニコが血だらけになって倒れていた。
「ニコニコさん!しっかりしろ!おい!」
「お……おぅイヴさんかい……もう出発……かい?」
既にニコニコは虫の息であった。地面には真っ赤な血が水溜まりを作っている。もう手遅れなのは誰の目を見ても明らかであった。
イヴは必死にニコニコを呼び続けた。
「ニコニコさん!…一体誰がこんなことをしたんだ!」
「あぁ……あれだ……まぁ……よい旅を……」
ニコニコは静かにイヴの腕の中で息を引き取った。
「一体誰が…」
「あれだろ、この町のギャングの仕業だろ」
ずっと壁に寄り掛かって見ていた李雷雷はあっさりとした口調で言った。
「まぁ、この町は治安が悪いからな。なんせ生き残りのやつらは心が荒んでるし、麻薬も蔓延ってるらしいからな」
これからその麻薬を売るんだがなと李雷雷は小声そっと付け足した。
「ギャング…お前そいつらに詳しいか?いくら同郷とはいえ見逃せない。」
イヴは強い眼差しで李雷雷を見つめた。
「…まぁ詳しいっちゃ詳しいな。いろいろここにはお世話になったし、あいつらのアジトは地下にあるぜ。そこに入るには合言葉が必要なんだ。まぁ俺は覚えてるから関係ないが…」
「連れていってくれ!」
(何をこいつ必死になってやがるんだ?人一人が死んだくらいで…)
李雷雷は内心で毒を吐いた。李雷雷にとって人の命はお金よりも軽いのである。
「あぁ…いいぜ、ついてきな」
これがイヴにとって運命の出会いとなるのである。
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