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黄色いTシャツから覗く、肌色の右腕は黒く変色し、歪な大砲の上半身へと変貌していく。
悪鬼羅刹。それが子供の頃に目覚めた俺だけの能力。
茶色い屋根で片膝を着いてアイズの細い背に標準を合わせると、俺は砲口から黒いエネルギー弾を発射した。
一直線に飛んでいく、黒い球体に気付いたアイズは適当な屋根で足を止めて呟く。
「天葬魔迎[テンソウマゴウ] 第二手・気護壁[キゴヘキ]」
今だ!俺はまた屋根へと飛び移り始めた。
やがて、アイズの周囲に張られた透明な膜に弾が弾かれた時、俺はアイズのいる屋根へと飛び移った。
悪鬼羅刹 第一形態・剣
俺は右腕を黒く歪な剣の刀身に変え、透明な膜へと目一杯振り下ろす。
しかし、それはビクともしない。
「クソッ!」
力の限り、何度も何度も右腕を振り下ろす俺を、アイズはその長身を利用するかのように暗い瞳で見下すのみだった。
「クソッ!クソッ!クソッ!」
後ちょっとで捕まえられるのに……。
目の前にいるのに……。
俺はその透明な膜を壊す力を持っていなかった。
土砂降りの雨の中、やがて、俺は自分の無力さを感じて、屋根に膝を着いた。
「……ぢぐじょう」
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