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「なんでだよ。なんで……」
頭が上がらない程の恩人を殺された悔しさに視界がぼやけていく。
血が出る程唇を強く噛みながら見上げると、アイズの表情は感情を持たない人形の様に冷たかった。
「なんでばっぢゃんを殺じだんだよ!!」
「……」
強い雨に打たれながら、罵声に近い声で俺は何度も何度も叫ぶ、。
「答えろよアイズ!!シカトしてんじゃねぇよ!!」
枯れるほど声を荒げても、返ってくるのは抑揚の無い声。
「だったらどうする?」
その発言に、頭の中で何かが切れる音がした。
「お前を殺じでやる。ぜっだいに!!」
怒りで顔を歪ませながら睨み付けると、アイズは表情を変えずに言い放った。
「だったらそうしろ。悪いが時間だ」
見上げるアイズの視線の先には、こっちに向かってきている黒い半月状の乗り物が一機。
減速するそれの入り口にアイズは飛び乗って去っていった。
俺は手足を広げながら屋根に仰向けになり、瞼を閉じると声が聞こえてくる。
『ソレデイイダナ?俺ノ能力ハ使ウ度二魂ヲ蝕ムゾ』
……悪鬼羅刹か。能力に人格があるなんて今でも信じらんないけど、俺は構わねぇ。
例え悪魔に魂を売ってでも、必ずアイズを殺してやる。
『フッ。楽シミニシテルゾ。オ前ノ復讐』
瞼を開くと、灰色の雲が強い雨を降らせていた。
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