第二章 黒の派閥

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―――一週間後 屋上の片隅でアイズが泣いていた。 その周りに群がるのは数人の子供。 ……何だ?これ? 『ゲン。お前、一体どうしたんだ?』 その中の一人、角刈り頭のゲンの表情は狂気に歪んでいる。 その真向かいに立つ小さかった頃の俺は、そのゲンを見て青ざめた表情をしていた。 ……これは、五年前、屋上でゲンと仲間たちがアイズを虐めてた時の光景? 『うひゃひゃ。アイズの次はお前をイジメてやるよ!』 涎[ヨダレ]を垂らしながら迫ってくるゲン。 俺が腰を落としたその時、どこからともなくばっちゃんが現れた。 『ばっちゃん!』 子供の俺がそう叫んだ時、目の前に白い天井が飛び込んできた。 そこで俺は目を覚ました。 「……夢……か」 子供の頃の夢を見るなんてな。 溜め息を吐きながら緑色のカーテンを開けると眩い朝日が差し込んできた。 そう言えば、屋上の件でゲンは精神異常と判断されて、ばっちゃんに別の国の病院に運ばれたんだっけな。 俺は思い出に耽るように目を細め、目の前の、静かに流れる川を眺めていた。 ばっちゃんが殺されてからもう一週間か。 ばっちゃんの事を思い出していると、孤児院に入った時の記憶が蘇ってきた。
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