携帯電話

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タクシーの窓から 春の日差しが温かく降り注いでいる なのに憂鬱な気持ちで 満池谷火葬場に向かっていた 学生時代に よくドライブした 見覚えのある道 夢遊病者のような感覚の中景色が流れてゆく なぜ私はそこに向かうのだろう 今朝方 携帯が鳴り続けていた 接待ゴルフの夫を朝5時に見送り 二度寝の幸せを味わいながら まったりとしていた時に 「美沙子 大変」 母からだった 「おはよう どうしたの」 「由希ちゃんが亡くなって…」 その後 言葉は続かなかった ただただ 母の嗚咽だけが 携帯から流れていた
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