32745人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな中。
「リョウおにいちゃん!」
七海はとたとたと走り、義母の後ろで暗い顔をして立っている義弟の足にしがみつきました。
「あっちでいっしょにあそぼ!」
「ああ、いいよ」
義弟は自身のジャージを引っ張る七海の頭をそっと撫で、固く結んでいた口元を緩ませました。
普段、私たちには見せない、娘にだけ向けられる優しげで――ぞっとする笑顔。
「何して遊ぼうか」
「んーとね~」
最悪なことに、娘の七海は義弟に懐いてしまっているのです。
幼い七海にはまだ理解できないだろうと思い、義弟の過去については話していません。
「オリガミしよっ」
「うん、やろうやろう」
普段は人見知りの激しい子なのに、義弟には出会ってすぐに打ち解けていた記憶があります。
たぶん、それは義弟が子供好きだから――もちろん一般的な『好き』とは違う歪んだ好意ですが。
そう考えただけで、寒気がして鳥肌が……。
最初のコメントを投稿しよう!