黒いセダン

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  外国の車だろうか? その黒塗りのセダンはブリキのおもちゃの様な風変わりなレトロなボディーデザインだった。 まん丸な二つのヘッドランプ、盛り上がったボンネット、剛健なメッキのフロントグリル、ロケットのようなテールフィン。 拓海はその風変わりな車に心ひかれた。 部屋の窓から数日に渡って星の観測を続けて解ったのだが、その黒いセダンは毎日、拓海の家の前に深夜になると停車していたのだ、そして、その車の運転手は目深に被った山高帽の下から、いつも拓海の住む洋館を見ている様な気がした。  
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