黒いセダン

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  とは言え拓海の父、正良も石田製薬という中堅の製薬会社を営んでいる社長であったので、拓海が思うほど程、暇ではないのだが。 石田製薬の創始者は、拓海のひいお祖父ちゃんの石田 清司だった、それから、祖父の勝に受け継がれて、現在は拓海の父親、正良が三代目の代表取締役を勤めている。 創始者の清司は終戦後、焼け野原の東京で人から血液を買って、血液銀行に売る事を生業とする、血液の売人であった。 昔は輸血に必要な血液は、このような売血で、まかなわれていたのだ。 血を売りに訪れる客は、金に困っていた貧困層がほとんどで、客の中にはヒロポンなどによる覚醒剤中毒者もいたりしたため、注射器の回し打ちなどにより伝染した、肝ウイルスが、輸血によって拡がるという問題が多く発生した。  
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