黒いセダン

7/32

621人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
    ◇ 拓海が小学四年生の時、星の観測をした夜に、あの個性的な黒いセダンを目撃してから、月日は流れて、彼はこの春から高校三年生になっていた。 ある日、拓海が深夜にトイレに起きた時、ふと窓の外を見ると、あの黒いセダンがいつものように路上に停まっている事に気が付いた、そして、相変わらず山高帽の運転手がこちらを覗いているのを見て少し驚いた。 というのは最近、お向かいのIT関連会社の社長宅が売りに出されて、社長一家はどこかへ引っ越していったのだ、どうやら、会社の経営が傾いていたようだった。 拓海はてっきり、あの黒塗りのセダンは向かいの家の送迎車だと思っていたので、もうその姿を見る事はないと思っていたのだった。  
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

621人が本棚に入れています
本棚に追加