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「うん、私はマリア・ラットスター……ノーヴィック・ラットスター伯爵の娘です!」
「んがぁー! やっぱりかぁー!」
あはは、やっぱりね……ん、でも、なんで彼女がここに!?
あれ? なんかヘンだぞ、おい!
俺が身代わりっつうか、彼女と間違われるかたちで拉致されたおかげで無事だった、という話だった気がしたけど?
「多分、双子の妹のアリアが私の代わりを演じてくれているはずです。」
「ふ~ん、そうなのか?」
「はいっ! アリアには超感謝しています!」
泣き止んだと思ったら、今度は双子の妹であるアリアとやらの話を始める。
「おい、静かにしろっ!」
マリアとのちょっとした雑談の割って入るお邪魔虫な男に怒鳴り声が響きわたる。
そしてカツカツカツという忙しない靴音が、同時に響きわたる。
「おい、サキュバス! 騒いでいたのは貴様だな?」
「サキュバスって呼ぶな!」
俺様の容姿が、そのサキュバスって存在に似ているってことは百も承知である!
だ~か~ら、そう呼ばれると不快な気分になるんだよ、この野郎!
さてと、獄卒と思われる軽装の鎧を身に着けた若い男がやって来て、俺様が放り込まれている牢屋の鉄格子の扉を二度、不愉快そうに舌打ちをしながら蹴飛ばすのだった。
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