キーホルダー

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キーホルダーを拾ってから1週間。 また同じルートで 散歩をしていると キーホルダーを拾った場所で 彷徨く男をひとり 見付けた。 何かを落としたのだろうか。 地面を 眼を凝らして見ている様が 見ているだけで 伝わってくる。 「絶対 此処だと思ったのに…」 よく見れば その男は 先週 商店街のテレビで見た 俳優ではないか。 そんな男が こんなところで。 「あの、神海さん?ですよね?」 「え?あっ、うわっ」 突然声を掛けた俺に驚いたのか 正体を 見破られた事に驚いたのか。 サングラスの向こうの目が 大きく見開かれたのが わかった。 「何か捜し物ですか?」 「えっと… キーホルダーを…」 …キーホルダー? サングラスを外した彼は 申し訳無さそうな顔で 確かにそう言った。 「…俺 此処で キーホルダー拾いましたよ」 「ホントですか!?」 「あれですよね?  片割れと合わせると クローバーになる…」 「それです!!  兄さんとの 唯一の思い出の物なんですよ…」 …嗚呼 だから こんな必死になって 探していたのか。 「キーホルダー、今俺の家なんですけど…」 こんなことなら 持ち歩いていれば良かったと 後悔したのは 言うまでもない。 「お邪魔して良いですか?」 まさか そう言われるとは思わないじゃないか。 .
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