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差し伸べられていた手を、僕は自然に取っていた。
「…ありがとう。」
「いいえ。お怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫だ。」
にっこりと微笑むその人は、隙一つ見せないような仕草をしていた。
でも―…。
「どうかしましたか?」
そう言って微笑むその人の笑顔は、どこか寂しげに見えた。
「あらっ、麻尋の顔に見惚れちゃったかしら?」
北斗がそう言うと、僕は少し微笑んで目を伏せた。
「…そうかもしれないな。」
(この人はきっと……。)
「…それでは良い一時を―…。」
そう言って、麻尋と呼ばれたその人は奥の部屋へと立ち去っていった。
その人と入れ替わるように、美雪達が集まって来た。
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