583人が本棚に入れています
本棚に追加
「…二人共、私は食事に行きますね。」
不意に立ち上がり、そう言うとそそくさと、保険医は保険室を出ていった。
それを、俺と祈は見送った。
「…倒れた時…血が…、流れてた…」
俺は意を決し、祈を見つめながら、口を開き途切れ途切れに、話をし始めた。
「えっ…何が?」
俺の言葉が理解できないのか、不思議そうに首を傾げながら言い。
「あ…の、太ももに…。あっ、急いで拭いたからっ、他は誰も…」
俺は言葉を付け足し、慌てながらフォローした。
「…あ…そか…、ありが…と…」
祈は理解したのか、切なそうに肩を落とし、下を向いてしまった。
また…沈黙。今度は俺じゃない、祈が話すのを待つんだ。
話して、くれるのを…。 つづく
最初のコメントを投稿しよう!