響く銃声

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―――響く銃声 目の前で少女が両手を広げて俺を庇った。 パンパンパンッ! 乾いた音が数発、俺の脇を通り過ぎ、目の前にいた男が苦々しげに舌打ちした。 何発もの銃声に驚いた客たちが店の中から出てくる。 隣のスポーツ用品店からも、電器店からも。薬局からも。 「チッ、大神を殺りそこなった!仕方ねぇ、ここは退け!!」 龍神会の連中は悔しそうに叫び、歩道に乗り上げてきた車に走り込んで蜘蛛の子を散らすように消えていった。 「おい!しっかりしろ!」 体を張って俺を庇った彼女が崩れるように傾き、走り寄って後ろから抱き抱えた。 彼女の血が滴り落ちた。 右手の小指が半分千切れて皮一枚でぶら下がり、左腕も撃たれて制服に穴が空いてそこから出血している。 「若、彼女を成田のところへ運びます」 「ああ、頼む」 「今、一也を呼び寄せました。あと数分で到着します」 「…数分か…待てねえな。榊、指を押さえるものなんかねえか?」 ハンカチでもなんでもいい。 「それではこれを使ってください」 榊に差し出されたハンカチで彼女の血にまみれた指を包んで縛る。 「あんたを巻き込むつもりはなかったんだ。すまねぇな」 青ざめた顔の彼女に謝ると首を横に振った。 「みんなが騒ぎ出してます。若、どうしますか?」 「金でも握らせて黙らせろ。それより車はまだか?」 「もうそろそろ到着します。若、血が、」 スーツに血が散っているのを見た榊に、 「あ?ああ、俺は構わない」 そう告げて彼女を抱き取ろうとした手を断った。 「痛むか?待ってろよ。すぐに医者に診せてやるからな」 痛みで顔を歪める彼女を一刻も早く成田に診せなければ。 「車はまだか?」 腕の中で彼女が震えている。 咄嗟に飛び出してきた彼女の姿が鮮明に記憶の中に浮かび上がった。 長い髪を靡かせて、 銃を構えたゴツい男たちの前に飛び出してきた。 両手をいっぱいに広げて、 俺を庇い、そして撃たれた。 ―――響く銃声 これは、裏の世界の物語―――
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